電子情報通信工学系(詫間キャンパス)

 技術者教育への取り組み

 香川高等専門学校詫間キャンパスでは,詫間電波工業高等専門学校の時代からキャンパス一体となって,技術者教育プログラムの策定を行ってきました。学習・教育目標の設定の流れは下図のようです。旧教育課程と詫間キャンパスの履修コースは,詫間電波高専の規程をもとに運営されています。

 
              図.「卒業(修了)時に身に付ける学力と資質・能力」設定の流れ
         (出典:平成19年度機関別認証評価「詫間電波工業高等専門学校自己評価書」)

 技術者教育プログラム

 香川高等専門学校詫間キャンパスの専攻科電子情報通信工学専攻では,本科4年次から専攻科2年次まで連続して行う教育課程(以下,教育プログラムと呼びます)を用意しています。
 教育プログラムはコース制で,次の2コースがあります。

(1)電子情報工学コース
   日本技術者教育認定機構(JABEE)の基準に適合したプログラムです。平成24年度に「電子情報工学コース」は,JABEE中間審査を受審し,認定されました。現在,新基準でのJABEE審査を受審するための準備を行っており,平成27年度に受審する予定です。

(2)電子情報通信専修コース
   専門知識や技術の修得に専念できる専修コースです。
   香川高等専門学校詫間キャンパス専攻科では,情報通信,半導体,情報処理や電子制御に関する専門知識や技術の修得に専念することができる専修コースを用意しています。電子情報通信工学専攻の学生は,電子情報通信専修コースを選択することができます。 専修コースでは,技術者としての基礎教育にとらわれずに,電子通信および情報制御分野の高度な専門知識と技術を学び,職業に必要な能力を身につけることを目指します。そのために,電子情報工学コースと同様にAからEの5つの「学習・教育目標及び期待される学習成果」に基づき,本コースで育成する技術者に必須と考えられる知識,能力及び物事に取り組む姿勢等を身につける教育を行ないます。専修コースの修了認定基準は,電子情報工学コースと同様ですが,B3とD3は緩和されています。

 専攻科入学時に何れかのコースを選択することになっています。
 「電子情報工学コース」は,JABEEにより認定されたコースで,コース修了生が修得した技術レベルの国際的な保証が得られるため,就職先への受け入れも容易になることが考えられます。
 また,平成15年度から技術士制度が改定され,JABEE 認定教育プログラム修了者は,技術士第一次試験が免除され,修習技術者になることができるようになりました。さらに,4年間の実務経験を経た後,第二次試験に合格することで技術士になることができます。

 このコースの目的は,技術者としての責任を自覚し,専門知識を深く身につけ社会の様々な要求に柔軟に対応できる,システム設計やシステム構築能力に長けた実践的な技術者を育成することです。そのために,以下に挙げたAからEの5つの「学習・教育目標及び期待される学習成果」に基づき,本コースで育成する技術者に必須と考えられる知識,能力及び物事に取り組む姿勢等を身につける教育を行ないます。表では学習・教育目標とそれぞれの学習・教育目標を達成したときに身につく能力を細かく明記しています。


学習・教育目標(Learning Objectives),
   学習成果(Learning Outcome),
      達成度基準(Performance Criteria/Measure

 

A

技術者としての責任を自覚し,人類の福祉に貢献できる倫理観を身に付ける.

 

 

A1 技術者としての責任を果たす能力(技術者倫理規定)

1) 安全で有用なものを作ることの大切さを知っている。(技術者の使命)

  2) 環境を保全しつつ地球資源を有効に活用することの大切さを理解している。(環境)

 

  3) 人間同士の相互了解を確認しあうことの大切さを知っている。(歴史,文化)

 

  4) 生命を尊重し,自他の幸福を願う姿勢が身についている。(人倫)

 

A2 人類の福祉に貢献できる能力(文化,社会及びその歴史)

 

  1) 技術者は公衆に対して責任を負う立場にあることを知っている。

 

  2) 技術者は有用で安全な技術を提供しなければならないことを知っている。

 

  3) 技術の有用性とリスクを示すことができる。

 

  4) 公衆の安全を最優先する姿勢を身に付けている。

 

A3 物事の良し悪しを根拠を示して判断できる能力

 

  1) 事例において,何が問題か説明できる。

 

  2) 事例を通して,他者の体験をわがものとしている。

 

  3) 公衆の安全,福祉,健康及び環境保全を優先して判断できる。

 

  4) 判断を多様な価値観から評価できる。

B

日本語及び英語で共同作業を良好に行うことができる.

 

B1 相手の意図を理解できる能力

 

  1) 日本語及び英語で相手の発言を正しく理解しようという態度を持っている。

 

  2) 日本語及び英語で発言の内容を文法や語彙の面から正しく聞き取り,理解できる。

 

  3) 日本語及び英語で対話の状況と内容から,相手の意図を正しく理解できる。

 

B2 自分の考えを相手に伝える能力

 

  1) 日本語及び英語で自分の考えを相手に正しく伝えようという態度を持っている。

 

  2) 日本語及び英語で自分の考えを文法や語彙の面から正しく相手に伝えることができる。

 

  3) 日本語及び英語で自分の考えが相手に正しく伝わったことを確認できる。

 

B3 役割を分担し,相互に協力して作業できる能力

 

  1) 作業の目的を知っている。

 

  2) 自分の役割を理解できる。

 

  3) 分担の作業を遂行できる。

 

  4) 助け合いながらお互いの作業を進めることができる。

 

  5) 話し合って個々の役割を決めることができる。

C

情報機器を活用して情報収集や情報分析,文書作成,口頭発表ができるようになる.             

 

C1 情報機器を活用して情報収集ができる能力

 

  1) Web検索ができる。

 

  2) 電子メール,ファイル転送ツールを使用できる。

 

  3) 収集したデータを管理できる。

 

C2 情報機器を活用して情報分析ができる能力             

 

  1) 表計算ができる。

 

  2) 表,グラフの作成ができる。

 

C3 情報機器を活用して文書作成ができる能力             

 

  1) ワープロを用いて文書を作成できる。

 

  2) 図表を含む文書を作成できる。

 

  3) 数式を含む文書を作成できる。

 

  4) 作図ツールを使って図を作成できる。

 

C4 情報機器を活用して口頭発表ができる能力             

 

  1) 時間配分が適切である。

 

  2) 理解しやすい構成になっている。

 

  3) 聞き取りやすい話し方ができている。

 

  4) 情報機器を使って発表できている。

 

  5) 簡潔に表現できている。

 

  6) 図表を適切に用いている。

 

  7) 目的と成果を要約して説明できている。

 

  8) 質問に適切に回答できている。

D

技術者としての基礎知識を身につけ,高度な関連技術を修得し,広い視野を持って技術の発展に対応できるようになる.

 

D1 数学,自然科学に関する知識

 

  1) 基本的な法則や定理を知っている。 (基本的な法則や定理と説明文の対応付けができる。)

 

  2) 基本的な問題が解ける。(法則を適用できる。)

 

  3) 基本的な法則や定理を説明できる。

 

  4) 応用問題を解くことができる。

 

D2 専門技術に関する知識

 

  1) 専門用語や現象・仕組みを知っている。 (専門用語や現象と説明文の対応付けができる。)

 

  2) 基本的な問題が解ける。(法則を適用できる。)

 

  3) 専門用語や現象・仕組みを説明できる。

 

  4) 応用問題を解くことができる。

 

D3 幅広い知識

 

   1) 学んだ知識が整理できている。

 

   2) 学んだ知識が応用されている分野を知っている。

 

   3) 学んだ知識を他の分野に応用できる。

 

   4) 技術が社会に与える影響を考察できる。

 

D4 技術の変遷を予測できる能力

 

   1) 技術の歴史を知っている。

 

   2) 技術の現状を知っている。

 

D5 自ら学ぶ姿勢

 

   1) 予習復習している。

 

   2) 文献調査ができている。

 

   3) 目標を立てて取り組めている。

E

与えられた課題を達成する手段を設計し,粘り強く問題解決に取り組むことができるようになる.

 

E1 計画を立案できる能力

 

   1) 目的を言える。(課題を理解している。)

 

   2) 手順を示すことができる。

 

   3) 計画案を示すことができる。

 

E2 回路又はシステムを設計できる能力

 

   1) 回路又はシステムを設計するための基礎知識を持っている。

 

   2) 設計手順,手法を知っている。

 

   3) 設計できる。

 

E3 回路を組み立てることができる能力,又はシステムを構築できる能力

 

   1) 回路の組み立て又はシステム構築のための基礎知識を持っている。
(回路部品や記述言語などの知識)

 

   2) 回路を組み立てる又はシステムを構築する手順,方法を知っている。

 

   3) 設計どおりに組み立てる又は構築できる。

 

E4 回路又はシステムの問題点を見つけることができる能力

 

   1) 回路又はシステムの正常な動作を知っている。

 

   2) 正常な動作かどうか検証できる。(予測値と実測値を比較して検証できる。)

 

E5 問題点を解決できる能力

 

   1) 問題点を理解している。

 

   2) 教師の助言を受けて,問題を解決できる。

 

E6 粘り強く取り組む姿勢

 

   1) 興味を持って取り組んでいる。

 

   2) 作業状況に応じて計画を見直している。(再製作,再構築,再設計)

 

   3) 達成するまで粘り強く取り組んでいる。

 

E7 自他の行動を判断し,チームで課題に取り組む能力

 

 

   1) 自己のなすべき行動を判断し,チームで課題に取り組んでいる。

 

 

   2) 他者のとるべき行動を判断し,チームで課題に取り組んでいる。

 
2013年4月1日付 履修コースに関する規程実施細則改定により更新.




○電子情報工学コース

     専攻科に入学を許可された者で,本科を卒業した者は電子情報工学コースに登録 することができる。

  ただし,詫間電波工業高等専門学校を卒業し,又は本科を経ずに専攻科に入学した者の電子情報工学コースへの登録は,高等専門学校の3,4,5年において 以下の科目を修得していることを要件とする。

 (1) 応用数学などの数学に関する科目を2単位以上修得 

 (2) 応用物理などの自然科学に関する科目を2単位以上修得 

 (3) 電気磁気学,電子回路,計算機システムなどの専門基礎に関する科目を4単位以上修得 

 (4) 工学実験に関する科目を5単位以上修得 

 ただし,本校詫間キャンパス本科の卒業生については,1,2,3学年の全ての必修科目と次表に定めた科目の単位を修得していることを要件とします。

本科卒業生の「電子情報工学コース」への登録要件となる科目

 

情報通信工学科

 

応用数学(4) ,応用物理Ⅱ(2) ,電気磁気学Ⅱ(2) ,電子回路Ⅱ(2)

通信工学実験Ⅰ(3) ,通信工学実験Ⅱ(4)

電子工学科

 

応用数学(4) ,応用物理(2) ,電気磁気学(2) ,電子回路(2) ,工学実験(7)

電子制御工学科

 

応用数学Ⅰ(2) ,確率統計論Ⅰ(1) ,確率統計論Ⅱ(1) ,応用物理Ⅱ(2) ,工学実験(6) ,電気磁気学Ⅱ(2) ,電子回路Ⅱ(2)

情報工学科

 

応用数学(4) ,応用物理(2) ,電気磁気学(2) ,計算機システム(2)

工学実験(7)

確率統計論Ⅰ,確率統計論Ⅱは平成25年度登録から要件とする。

 

 

○電子情報通信専修コース

   登録は,専攻科電子情報通信工学専攻に入学を許可された者で,技術者としての基礎教育にとらわれずに,電子情報通信分野の高度な専門知識と技術を学び,職業に必要な能力を身につけることを希望する者に対して行う。


教育プログラムの修了要件

○電子情報工学コース

   修了要件は次のとおりです。

 (1) 専攻科を修了し,学位(学士)を取得すること。 

 (2) 学習・教育到達目標,学習成果について,その達成が認定されること。達成認定方法については別に定める。 

 (3) 教育プログラムにおいて修得した科目のうち,数学,自然科学及び科学技術に関する科目の授業時間(授業科目に割り当てられている時間)が全体の60%以上であること。


○電子情報通信専修コース

   専攻科の修了要件と以下のいずれか1項目以上を満足した場合に電子情報通信専修コースの修了を認める。

  一 専門職としての資格を1種類以上,取得していること。対象とする資格は別途定める。

  二 専攻科においてインターンシップを経験していること。

  三 専攻科において企業との共同研究を体験していること。

  四 研究会等での学外発表があること。





 準学士課程(本科)4,5年と専攻科課程1,2年の4年間の課程で大学相当の技術者教育を実施しています。このことは,学則の以下の定めによります。
  • 香川高専学則第8章 専攻科(技術者教育プログラム)第55条 本校の第4学年及び第5学年並びに専攻科を通じて技術者教育プログラムを置く。
 詫間キャンパスにおける大学相当の技術者教育実施の概要を年表として示します。


年.月

1971.4 詫間電波工業高等専門学校 設立
2004.4 専攻科(電子通信システム工学専攻,情報制御システム工学専攻)設置
情報通信工学科,電子工学科,電子制御工学科,情報工学科の4学科を基礎とする学科として専攻科が設置された。
2004.4 JABEE基準の学習・教育目標を達成しようとする教育プログラムである「電子情報工学プログラム」への学生登録を開始
2006.3 専攻科第1期生修了審査,電子情報工学プログラム修了審査
2006.4 専攻科に3コース制を導入
・電子情報工学コース(電子情報工学プログラムを名称変更)
・電子通信専修コース
・情報制御専修コース
2008.3 専攻科第3期生修了審査
2008.4 コース制についての規程を整備 「詫間電波工業高等専門学校履修コースに関する規程」
学習・教育目標の達成度認定方法を変更
2008.6 コース制で初めてのコース修了審査
2009.4 2009年度専攻科入学生の教育課程表を一部変更
学生の授業負荷平滑化のため,科目の開講時期を一部変更した。
2009.10 香川高等専門学校 設立
詫間電波工業高等専門学校と高松工業高等専門学校が統合され,旧高専入学者の教育プログラムは維持された。
専攻科(電子情報通信工学専攻)設置
2010.3 専攻科第5期生修了審査,コース修了審査
2010.4 香川高等専門学校 詫間キャンパ ス第1期生入学
・通信ネットワーク工学科
・電子システム工学科
・情報工学科
・専攻科電子情報通信工学専攻
2010.4 電子情報工学コースのJABEE認定申請
2011.3 専攻科第6期生修了審査,コース修了審査
2011.5  「詫間電波工業高等専門学校 専攻科 電子通信システム工学専攻及び制御情報システム工学 電子情報工学コース」のJABEE認定(認定開始年度 2009年度)
 
2012.2  「香川高等専門学校 電子情報通信工学専攻 電子情報工学コース」にプログラム名変更の認定
 
2012.3  専攻科第7期生(香川高専第1期生)修了審査,コース修了審査 
2012.4  電子情報工学コースのJABEE中間審査申請 
2012.11  電子情報工学コースのJABEE中間審査を受審 
2013.3   専攻科第8期生(香川高専第2期生)修了審査,コース修了審査 
2013.4 「香川高等専門学校 電子情報通信工学専攻電子情報工学コース」が中間審査において
JABEE認定(2015年3月まで)