エレキギター(エレクトリック・ギター)
本研究室の研究対象の一つとしてエレキギター(Electric guitar)を扱っており,音響学的な解析と設計の提案を行っております。

エレキギターの一本の弦を弾いた場合でも,かすかですが唸りが存在することをご存じですか? もし,知っている方があるとすれば,その方はプロのミュージシャンか音楽や楽器に相当な興味と感性,聴力を有した方だろうと思われます。
エレキギターは,電気的なアンプ(増幅器)が無いとかすかな音しか聞こえません。アコースティックギターと呼ばれる,通常のクラシックギターやフォークギターには,ご存じのように胴(ボディ)部が表版と裏板,側板により共鳴用の空洞となっています。弦の振動がブリッジ,表版を振動させ,空洞部に共鳴を生じさせて音が響きます。
これに対して,ソリッドギターと呼ばれるエレキギターのボディは非常に硬くて重く,むしろ弦の振動のエネルギーがブリッジから逃げないような形になっています。エレキギターでは,弦の振動をピックアップと呼ばれる電磁型変換器を用いて電気信号に変換しています。つまり,エレキギターの音の特徴を決定づけるのは,この変換器であって,次に弦の振動やブリッジを介したボディやネックであると言えます。ジャズなどでは,空洞のボディを有したギターにピックアップを取り付けたセミアコースティックギターが使用されていますが,ソリッドギターと比較すると弦の振動の伸びも小さく,またアコースティックギターの音をマイクで拾ったものとは全く異なる特徴的な響きを出しているのはご存じかと思います。
エレクトリックギターでは,色々な演奏法と共に,電気的に色々なコントロールを加えた音を出すことが可能になります。それらの音は,歴史的,実用的にエレキギターとしての確立をなしたような感がありますが,実は電磁型変換器が与える影響が色々と現れてきます。次からは,コウモリの話も続けますが,そのようなギターの奥深い所も解説していきたいと思います。