國井 洋臣

 志を繋ぐ

 

情報工学科  國井 洋臣

 

冬休みの間に、一冊の本を読む機会に恵まれた。戦争責任を明言して全国でただ一人自ら判事を退官した金子正則さん。後に香川県知事を24年間務めた人物である。私が子供の頃から、東京に就職をした後も長く知事であったことを記憶している。当時、黒塗り自動車を嫌い、ゲタ履きに自転車で大好きなコーヒー店に通う姿はよく知られていた。平成八年に没した後、業績と人物を偲んで、有志の方々が協力して金子正則先生顕彰会を設立し、昨年末にハードカバーの装丁も立派な300ページの伝記「高志低居 金子正則の生涯」を出版した。非売品であるが、図書館等には献本されているとのことである。また、昨年春には縁の深い丸亀の城北小学校南の公園の中に顕彰碑が建立され、この石碑の中には建立のための浄財を寄せた千三百名余りの有志の方々の名前が記された木簡が収められ、千年後の開扉を待っていることが書かれている。何とも壮大な話である。

高志低居とは「志は高く、暮らしは質素に」の戒めで、香川用水、瀬戸大橋、道路網の整備など、戦後の香川の礎を作る中でこの戒めを実践された。

また、特に郷土を愛し、文化面や教育にも熱心であり、人の輪こそ財産と、学校等の講話では、

「青くすんだ広い大きいものがある。それは海だ。

さらに大きいものがある。それは空だ。

更にそれより大きいものがある。それは人の心だ。」

俳優森繁久弥の詩の引用であるが心の大切さ大きさを若い人たちに訴えたこと。

そして、「お義理で、理屈で世の中を渡ってはいけない。体当たりで心と心でぶつかってこそ本当のxxxができる」とも書かれている。

本校には、木村奨学会という奨学金制度があり、高学年で各学年二人が奨学金を受給している。奨学会理事長木村壽雄氏は、金子氏を人生の師として尊敬し慕っておられ、郷土の学生のために私財を投じて奨学会を設立した方で、この顕彰会では中心的な役割を果たされている。

先人の偉大な人たちの行動や考えは、多数の人々に様々な影響を与えている。人の心を豊かにし、これからも脈々と継承されていくものと信じている。