創造基礎工学系(高松キャンパス)
機械工学科
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スターリングエンジンの動作原理

1シリンダーディスプレーサー型スターリングエンジンはなぜ動くのか?
(動く原理)



 上図1はスターリングエンジンを横から見た図です。上から見た図、全体の構造を示す図の詳細はこちら(http://www.kagawa-nct.ac.jp/course/ME/522_jissyu-sogo/star2f.gif)を見てください。予め、スターリングエンジンの構造がわかったものとして、なぜ動くのかを説明しましょう。
 なお、構造的には以下の特徴があります。

(1)シリンダーの左側は加熱側で、右側(ギザギザの放熱板がついた部分)が冷却側です。

(2)シリンダー内の気体(空気)はパワーピストンによって気密が保たれているます。ディスプレーサ-ピストンとシリンダーの内壁との間には1mmの隙間があり、気体(空気)は加熱側と冷却側を行ったり来たりすることができます。

(3)パワーピストンはロッド(棒)およびクランクピン(詳細な形はこちらを参照してください)によってクランクホイール(回転板)に連結されており、パワーピストンが左右へ動くと、クランクホイールが回転する機構になっています。

(4)ディスプレーサ-ピストンもロッド(棒)およびクランクピンによってクランクホイールに連結されています。ただし、クランクホイールとの連結位置は角度が90度ずれています。

(5)シリンダ内の気体の容積(加熱側+冷却側)はパワーピストンが左右に動くと変化します。パワーピストンの位置は図②がいちばん左側にある状態で、図④がいちばん右側にある状態です。図①および③の状態がほぼ中間の状態です。

(6)ディスプレーサーピストンが左右に動くにつれてシリンダー内の気体(空気)は加熱側と冷却側とを交互に移動を繰り返します。この気体の移動は、ディスプレーサーピストンとシリンダー内壁との隙間(1mm)を通して行われます。

 以上の構造上の予備知識を持った上で、スターリングエンジンがなぜ動くのかを説明しましょう。

 まず、①の状態では、ディスプレーサーピストンは上死点にあり(クランクホイールとの連結点が左端の位置にある)、シリンダー内のほとんどの気体が冷却側にあります。したがってシリンダー内の大部分の気体は冷却されて収縮が続いており、そのためにパワーピストンは左に向おうとします。パワーピストンが左に進めば、それに連結されたクランクホイールは右回転することになります。

 ②の状態まで進むと、パワーピストンがほぼ上死点にきます(クランクホイールとの連結点が左端の位置にくる点を上死点という)。それに先行したディスプレーサーピストンはクランクホイールの連結位置をみればわかるように90度先行して連結されていますから、シリンダー内の平均的位置(中央部分)に進んでくる。このため、図①では冷却側にあった気体は加熱側に移動する。この移動はディスプレーサ-ピストンとシリンダ内壁との隙間(1mm)を通って起こる。加熱側に移動した気体は、加熱されることによって膨張が開始する。この気体の膨張によってパワーピストンは右向きの力を受け、これに連結したクランクホイールは右回転をします。
 パワーピストンがちょうど上死点の時は①のトルク(回転させようとする力のことでモーメントともいう)の惰性で回転を続けますが、上死点を少し過ぎた②から③、④と進む間中ずっと気体は膨張をし続け、パワーピストンは右向きの力をうけ、この力がクランクホイールを右回転するトルクとなります。

 ③の状態でディスプレーサーピストンは下死点となり(クランクホイールとの連結点が右端の位置にくる点を下死点という)、シリンダー内ではいちばん右端にくる。ディスプレーサーピストンはこの後左に向きを変えて移動し始める。これによって、③から④の間に、加熱側にあった気体を冷却側に移動させることとなる。一方、パワーピストンはこの間さらにシリンダー内を右側に移動し、④のパワーピストンのほぼ下死点に至る時には冷却側に移動した気体の収縮が始まる。気体の収縮が始まると、パワーピストンは左向きの力を受けることになります。そして①の状態に続きます。

 上のように①~④を繰り返すことによって、パワーピストンは左右に動き、これと連動してクランクホイールが回転することになります。以上が、スターリングエンジンが動く理由です。



スターリングエンジンの回転方向を変えるには?

 上の説明では、クランクホイールが右回転でした。左回転させたいときはどうすればいいのでしょうか。


 上図2を見てください。図2は図1とパワーピストンおよびディスプレーサーピストンの位置関係は全く同じ状態を示しています。しかし、両図の①を見比べると異なる点があります。
 図2はクランクホイールを裏返して組立てた図で、図1の①では下側にあったクランクピンの位置が上側に移っています。
 そうすると図2では①の気体の収縮によるトルクは左回転のトルクとして働くことになります。②、③、④の説明も同じで左回転のトルクに変わります。よって、クランクホイールは左回転します。




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